微分幾何学1

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概要: パラメータ表示された曲線と曲面の曲率の導出をまとめておく.

 

1平面曲線の表現方法

 平面曲線には3種類の表現方法がある.右は半径rの円の例.

- Explicit  (陽的表現)       :     :  

- Implicit  (陰的表現)       :   :  

- Parametric(パラメータ表示) :   : 

ここではパラメータ表記に注目する.

 

 

1-1平面曲線の弧長パラメータ表記

 

 あるパラメータt により表現された,2次元曲線C上の点p(t)を考える.ただし,パラメータtが増加するとき,p(t)は常に同じ方向に進むものとする.

C:  …(1)

p(t)tで微分すると,tを時間と考えた時の,曲線の速度ベクトルが得られる.時間での微分であるためニュートンのドットを用いて,,と書かれる事が多い.

端点O(t=0)から点P(t=t)の距離(弧長)は,速度ベクトルの大きさの時間積分で得られる.

ここで,式(3)には,点Pの位置を表すtpのパラメータとしてのtが入っており,ややこしいので, = と書いても良い.式(3)は定性的には,弧長stの関数であるという意味(当たり前)なので,

と書ける.パラメータtが増加するときp(t)は止まることなく常に同じ方向に進むので,f(t)は単調増加関数になる.つまり,fには逆関数f-1が存在する.

このtを式(1)に代入すると,曲線C上の点pをその弧長sをパラメータとして表現できる.

これを曲線の弧長パラメータ表現と呼ぶ.ただし,は,存在が明らかでも,f--1を綺麗な形で書く事が困難な場合が多く,実際の計算にはほとんど必要ない(教科書中では必要とされているのをあまり見ない).

  弧長パラメータsで表される曲線pの速度ベクトルp'の長さを考える.('は,パラメータsでの微分を表す.)

弧長パラメータsによる微分は,’を用いて表現されることが多い.ここで式(3)の両辺をで微分すると,下記の通り孤長パラメータsと時間パラメータtの関係式が得られる.

ここで,式(8)は式(9)用いると,以下の通り計算できる.

つまり,孤長パラメータであらわされた平面曲線の速度ベクトルの長さは1になる.また,曲線C上の点(s=s0)において,曲線Cの式をテイラー展開し2次以上の項を無視すると,

この式は,点s=s0で曲線Cの一次近似,すなわち接線を表す.つまり.p'は接線方向のベクトルを表す.

 

 

 

1-2平面曲線の曲率

 

 平面曲線上の点p(t)における単位接線ベクトルをe1と定義し,これを90度反時計周りに回転したベクトルをe2とすると,p(t)における局所座標系が定義できる.

ただし,sは弧長パラメータである.曲線上を微小距離進んだ時の接線ベクトルe1の変化割合を,曲線の曲率ベクトルkと定義する.

e1e1=1の両辺を微分すると,e1e'1=0より,e1e'1は直行する.つまり,e'1e2のスカラー倍(k)で表せる.

この係数kを曲率と呼ぶ.ke2方向を向いているときに正になる.

 

 ざっくりまとめると,曲線pを弧長パラメータsであらわした時, p(s)の1階微分が接線p'=e1に,2階微分が曲率ベクトp''=kになりその大きさk=||p''||が曲率になる.曲率の正負は,接線ベクトルe1p'を90度回転したベクトルe2と曲率ベクトルkとが同じ方向を向く時,正となる.また,曲率ベクトルとe2は平行になる.

 

練習. 平面曲線p(t) = (x(t), y(t))の曲率を求めよ.ただし,tは任意のパラメータとする. 

以下,ドットはtでの微分を表す.

まず,p(t)を弧長パラメータsで表した時のstの関係式は以下である.

平面曲線の曲率は弧長パラメータの二階微分の絶対値なので,(i)に注意して式変形を施すと,

よって

また,tが弧長パラメータなら,(x'x'+y'y')=1の下で,上記と同様の計算を行い

となる.

 

 

 

1-3空間曲線

 

 パラメータtにより表記される三次元空間曲線を考える.

平面曲線のときと同様に,弧長sを求める事が出来,

この弧長パラメータで,曲線を再定義する事が出来る.

この曲線の接線ベクトルe1と加速度ベクトルe'1は,それぞれ1階微分,2階微分により,以下の通り求まる. 

弧長パラメータsを用いると接線ベクトルの長さ|||が自然に1になる.また,加速度ベクトルの大きさを曲率kと定義する.また,e1e1=1の両辺を微分するとe1e'1=0なので,e1e'1は直行する.上記のe1e'1kを用いると曲線p上に正規直行座標系が定義できる.

このe1e2e3をそれぞれ,接線,主法線,従法線と呼ぶ.

 曲線関係で重要な事を以下にまとめておく.

-任意のパラメータtで表現された曲線pを,弧長sをパラメータとして表現できる.(tが増加するときp(t)が停留することなく同一方向に進む必要はある)

-弧長パラメータsを用いると,接線の長さ||p'||=1となる.また,という関係式が必要になる事が多い

-曲率は,弧長パラメータ表現した下での,加速度ベクトルの長さで定義される.

-曲線上の点に,正規直行座標系e1e2e3を定義する事が出来,その方向を,接線,主法線,従法線と呼ぶ.

 

 

 

曲面の曲率

 

曲面は,2個のパラメータにより表現される位置ベクトルp(u, v)の動く軌跡として表現される.

このパラメータuv一方の変数を固定し,もう一方を動かすと,曲面に乗る2本の曲線が描かれる.

また,この曲線の接線ベクトル(速度ベクトル)は以下で表せる。

ここでは,pupvが一次独立である場合を考える.曲面の任意の接ベクトルはpupvにより張られるので,apu+bpvと書く事が出来る.このベクトルの長さの二乗は,

これを曲面の第一基本形式と呼ぶ.第一基本形式は全微分dp=pudu + pvdv を用いて,

Ⅰ = dpd= Edudu+ 2 Fdudv+Gdvdv

とも書ける.これは,曲面pの微小接ベクトル(dpudupvdv)の長さの二乗を表す.全微分(dp=pudu + pvdv)とは,多変数関数の全ての変数が微小量動いた時の全体の変化量である.duやdv微小変化量を表す変数と考えておけば良い.

 

  u-v空間中に曲線C: (u(s), v(s))があるとき,この曲線は,曲面p上でも曲線Cpを描く.

パラメータsは,曲線p(s)の弧長になるように定められているとする.

この曲線のuv平面での接ベクトルは,(du/dsdv/ds)であり,三次元空間での接ベクトルは,以下の通りである. (二変数関数のチェーン規則を適用した)

さらに,この曲線の曲率kp(s)の二階微分の長さであり,この曲線の法線ベクトルe2p(s)の二階微分を正規化したものなので,以下の通りとなる,

一般に,上式の表す曲線p(s)の法線ke2と,曲面p(u,v)の法線nは平行で無い事に注意.今,曲面p(u,v)の法線nは,2本の接線ベクトルを用いて以下のように書ける.

ここで,曲面上を動く曲線p(s)の二階微分(ke2)を,曲面p(u,v)の法線nに射影した量を考える.

これを曲線pの法曲率と呼び,この式の形を第二基本形式と呼ぶ.ただし,L=puun, M=puvn, N=pvvnは第二基本形式の係数である.式(15)は曲線p(s)の曲率ベクトルを表し,曲面p(u,v)の法線とは無関係なのに対して,式(16)の法曲率は,曲線曲率の曲面に依存する成分を取りだしたものである.

 

ややこしいので噛み砕く.

1)三次元空間に曲面 p(u,v)がある.

2)uv空間の平面曲線C: (u(s), v(s))は,曲面上でも曲線Cp:( p(u(s),v(s)) )を描く (パラメータsをCpの弧長になるようにとる)

3)曲線Cの接線は,(du/dsdv/ds)

4)曲線Cpの接線はpdu/ds + pv dv/ds (pu pvが作る行列をpのヤコビヤンと考えても,2変数チェーンルールを使ったと考えてもOK)

5)曲線Cpの曲率は式15

6)曲線Cpの法曲率は式16

7)式16をよく見ると,法曲率は,曲面から得られる量(L=puun, M=puvn, N=pvvn)だけでなく,接線方向を表す量(du/dsdv/ds)に依存する.(このu(s),v(s)は,|| pdu/ds + pv dv/ds ||=1を満たすようになっている必要がある.)

 

 

  今,曲面p(u,v)上のある点Pにおける任意の接ベクトルは,u方向v方向への微小変化量abを用いて,pua+pvbとかける.この接ベクトルの長さをAとすると,正規化した接ベクトルはpua/A+pvb/Aであり,式16から,点Pにおける法曲率は,

となる.ここで(du, dv)を色々と変化させた時の法曲率の最大最小値をそれぞれk1k2とし,(k1+k2)/2を平均曲率,k1k2をガウス曲率と呼ぶ.上式の極値を求めるため,∂k/∂a=0, ∂k/∂b=0計算したいが,複雑すぎてうまくいかない.そのため,式(17)を次のように変形し,

両辺を, abで偏微分して∂k/∂a=0, ∂k/∂b=0と置く.

この式を満たす(a,b)!=(0,0)が法曲率の最大最小値を与える方向ベクトルで,この式を満たすkがそのa, bに対する法曲率の極値になる.ここで,(a, b)!=(0,0)となるa,bのペアが存在するためには,上の連立方程式が解をもってはいけないので,行列式がゼロ,つまり,

が満たされる必要がある.さらに,上式はkの二次式なので2個のk1k2が解となり,

が得られる.この時,最大値を最小値をとし,それを与える(a1, b1),(a2, b2)をを主方向と呼ぶ.以上より,ガウス曲率と平均曲率が,第一,第二基本形式の係数のみで求まる事がわかった.

 

今後の予定

+曲面上の幾何とラプラスベルトラミオペレータ

+陰関数表現における曲率

 

井尻敬 @ 生物情報基盤, 理研 

勉強した日 2011/2/10